みやふきんの見聞録

見聞きしたり感じたものを記録するブログ

あの橋を渡れば(若き日のレンタルショップの思い出)

 素敵なコラムに出逢った。

 そのコラムはこちら↓

https://www.pintscope.com/column/yuki-fukutomi-08/


 そのコラムを読んで私自身が若い頃通っていたレンタルCDショップの記憶がよみがえってきた。

 というわけで、そのレンタルCDショップにまつわる記憶を記しておこうと思ったのである。


 私が住んでいた町は、商店街に古い街道が通っている田舎町だ。年月が経つにつれ、町から店がなくなっていった。私が大学生になる頃には、おもちゃの店も書店も時計店もなかった。

 そんな町に当然CDショップはなく、レンタルCDショップもなかった。川の向こう岸の隣町まで行かなければ、それらはなかったのだ。

 隣町へ行くにはそれなりに大きな川にかかる割に道幅の狭い橋を渡らなければならなかった。歩けば1時間近くかかってしまう距離だから、高校生の私には隣町までの移動手段は自転車しかなかった。歩道は狭く、車が歩道ぎりぎりをビュンビュンと飛ばしていく。風など吹こうものなら、煽られて、車道側へ飛び出しそうになるのを必死で立て直して自転車を漕いでいた。できればその橋は渡りたくないから、レンタルCDショップへはそんなに頻繁には行ってなかった。けれども危険をおかして、あの橋を渡ってしばらく走った先には、音楽があった。好きなアーティストが雑誌でオススメしていたアルバムだとかを借りては、CDラジカセでカセットに録音して聴いていた。その頃私が聞いていたのは、スティービーワンダーのモータウンレコードの時代の曲が中心だった。

 隣町の小さな雑居ビルにあったそのレンタルCDショップは、チェーン店ではなくこじんまりとしていて、店にいる人もそんなに多くはなかったが、その空間に行くと、心地よい緊張感を感じられてよかった。そのお店は、私が大学生になる前にできたTSUTAYAの影響を受けてか、いつのまにか無くなっていた。TSUTAYAの方が魅力的に感じられたのは確かだった。店の規模は2倍で、おしゃれな感じがしたからだ。

 私が生まれた町を出て別の場所で暮らすようになるまで、TSUTAYAには通った。でも、懐かしく思い出すのは、あの橋を渡って、怖い思いをしながらも自転車で向かった小さなレンタルCDショップなのだった。きっとそれは、音楽に対する興味がどんどん広がっていこうとするその最中にあったからだと、今は思う。