みやふきんの見聞録

見聞きしたり感じたものを記録するブログ

2021年夏以降のアート体験まとめ

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3月に最果タヒ展へ行ったあと、しばらく新型コロナウイルス流行で美術展やギャラリーへ行くことをやめていた。夏以降、少し流行が落ち着いたのであちこちへ出かけた。

それを備忘録としてまとめようと思う。

 

[行った展覧会一覧]

 

以下、それぞれを詳細に語る

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7月

上村松園展 京都市京セラ美術館

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前期後期に分かれていて、私は前期のそれも初日に見に行った。時間指定券を購入していて、電車遅延で遅れたが、入館できた。人はそれなりに多いが、絵の前でじっくり立ち止まって見る分には困らない程度。今までこんなに多くの松園作品を時系列で見たことがなかったので、その空気感や繊細さに心打たれる。特に印象に残った作品のポストカードをおみやげに買って帰った。特に「人生の花」の構図、作品の纏う静かな空気感が好き。

 

「上村松園」展が京都市京セラ美術館で - 近代京都画壇を代表する日本画家、約100点から探るその全貌 - ファッションプレス

 

ちこちこ小間ごと 山口晃展 ZENBI鍵善良房

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以前THEドラえもん展を見たときに知った画家。新聞での連載など、京都にゆかりのある作品の展示。とにかく作品数が多い。そしてクスッと笑えるようなユーモアのあるものもあって楽しかった。迫力がありつつも細やかな画風がいいなぁと思う。今年はパラリンピックのポスターも手掛けられていて、それで知った方も多いと思われる。鍵善良房という和菓子屋さんが作られたギャラリーで、入館の際にもらった干菓子が菊の形で美しくべらぼうに美味かった。

山口 晃 -ちこちこ小間ごと- – ZENBI | ZENBI -鍵善良房- KAGIZEN ART MUSEUM 公式ウェブサイト

「はぐれた落ち葉」三宅佑紀個展 KUNST ARZT 

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 小さなギャラリー。画家さんが在廊されていて、お話を少し聞いた。実物を目にしないとわからない描かれ方で、光の当たり具合や、見る角度によって見えたり見えなかったり、違うように見えた。ケント紙にパステルで重ねられた落ち葉。共有できる記憶を呼び出したいという作者の想いが、私のやりたいこととすごく似ていて、私もと口にしたかったけどなぜか出来なかった。

ただ、私の中には共有できる記憶がなかったかもしれないけれど、この場で感じたことは共有できる記憶になると思った。そこには、この場でしか感じられないことが確実にあった。

 

濱田菜々個展 ギャラリーギャラリー

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寿ビルという少し古いビルの中にある小さなギャラリー。窓が印象的。その空間に似合いすぎるテキスタイルインスタレーション。エアコンの風でゆらめくテキスタイルが、なんとも心地よくて、ずっと見ていたい、そこにいたいという空間だった。

 

9月

「よみがえる骨董たちvol.4」

ART HOUSEさんでの骨董展は過去に2回見ている。作家さんが骨董に細工して作品を作ったり、作品の中に骨董品の素材を活かして入れ込んだりされている企画展。骨董の食器も骨董品店の協力で販売されている。

私がいつも見ている作家さんが参加されていたので見に行く。

DMのビジュアルにもなっている藤本麻野子さんのお皿は本当に美しくて素敵だった。

 

「紅茶PACKEGE」

こちらも ART HOUSE企画展。作家さんが選んだ紅茶をイメージにしてデザインした正方形や長方形の缶。いろんなのがあっておもしろかった。中身の紅茶も香りが良くて美味。空缶は今は棚に飾っている。

 

「十感」堀としかず/hori個展

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お気に入りの画家さんのひとり。ART HOUSEさんでの個展は2年くらい前から見ている。

今回は10年前の作品を現在の画風で構築し直すという作品があった。10年前の作品も今の作品もどちらも素敵。私は今の作風に変わった時点からしか見てなかったので、新鮮だった。

 

10月

 フィンレイソン展  京都文化博物館

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家の壁紙を選んでいる時、カタログでフィンレイソンを知った。北欧のテキスタイルデザイン。その展覧会があると知り、楽しみにしていた。オンライン開催になった講演会もメールで申し込んで見ることができた。フィンレイソンという会社がどんなふうに発展してきたか、その歴史を知る機会となった。2社と合併してより強みを増したフィンレイソン。展示では歴史はもちろん、いろんなデザイナーのいろんなデザインを知ることができて、とても楽しかった。ミュージアムショップはおみやげをどれにするかとても悩んで長居してしまった。2021年1月10日まで京都文化博物館で開催し、そのあと展覧会は巡回するらしい。

フィンレイソン展 -【MBS】毎日放送

 

11月

「ひずみ」藤本麻野子個展 ART HOUSE

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ART HOUSEさんでの個展はなるべく見に行っているお気に入りの画家さん。今回はこれまでの作風をより変化させて進化した感じがすごく伝わってきた。色の微妙な変化や線の細やかさ柔らかさなど作者らしい雰囲気を残しつつも切り取られ、重ねられて再構築されて作られた絵が新鮮だった。

 

木津川アート2021 木津川市瓶原地区

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会期終了の数日前に催しを知って、あわてて出かけた。木津川市自体は実家からそんなに遠くないので知っていたものの、瓶原(みかのはら)地区へは用事がなかったのもあって行ったことがなかった。

今回、行くことができて本当によかった。まず瓶原地区の里山の景観の素晴らしさ、それがあってこそのインスタレーションだと思った。レンタサイクルを一回800円で借りて、およそ3時間で見て回ったが、時間が足りなかったのでほぼ駆け足。スタンプラリーもしていて、なんとかクリアして缶バッジをもらえた。

木津川アートの特色は地域の方の協力なしには行えないところなんだろうと感じた。実際に住んでおられるお宅の一角をアートの場所として提供されていたり、今は使っていない場所だけれどオーナーがその時だけ貸しているような場所もあった。秋の里山を自転車でめぐるということも楽しく、その風土にひとときの間入り込んだアート空間を味わうことは、本当に素敵な体験だった。

木津川アート

 

12月

「月を拾った日。」 ぎゃらりぃあと

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大阪市中崎町の住宅街にあるコミックアートに特化したギャラリー。私のお気に入りの作家さんYunaさんが出展されることを知り、見に行くことにした。この企画展の出展作家さんはどなたもすてきな絵を描かれていて、見ごたえがあった。初見で特に気になったのはさわさんの「永日」という作品と、月白しきさんの猫の作品。お目当のYunaさんの作品は水彩のにじみの表現が好き。柔らかくもせつない世界観。以前空掘商店街のギャラリーで知った針金鳥さんと横並びでの展示だったのもテンション上がった。私のお気に入り作家さんが申し合わせてないのに横並びって!

 

「たなかしんの旅と絵本の原画展」 阪急うめだギャラリー

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ART HOUSEさんでちらっと見たことはあっても、こんなに多くの作品を一度に見たのは初めてでとにかく圧倒された。そして見初めてわりとすぐに絵を見ていたら涙が出てきて止まらなくなり、マスクの中が涙と鼻水でぐちゃぐちゃになったので、これはまずいと一度外へ出て、冷静な状態に戻してからまた見に行った。こんなふうに絵に圧倒されて涙がとまらなくなるのは初めての経験で自分でもびっくりだった。

絵本のかわいらしいタッチと旅の絵の神秘的な雰囲気が印象的。展示の仕方もとても素敵で、別世界に遊びに来たかのような楽しさがあった。

 

「DREAMS 子供のころ見た世界 鹿島孝一郎 2冊のえほん原画展」 Kara-S

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スペインで出版された鹿島さんの二冊の絵本の原画展示。細やかな描写とやわらかな色使いで独特の世界観の画風。私は和泉市のART GUSHというイベントで鹿島さんの絵を知ったのだが、その時のモチーフがティーとカメレオンだったので、今回絵本の原画を見ることができたのはとても感慨深かった。そしてギャラリーには、机などアトリエの再現もされていて、イタリアの絵本をもとにしたイタリア語での動画や、現在FM802と共同で制作中であるアニメの試作版が流されていたり、とにかく素敵な空間だった。そして鹿島さんが在廊されていて、来られた方にほんのすこしではあるが絵を説明してくださるという親切さもまた印象的だった。なんとか残っていて購入できた絵本にサイン絵を買いてもらえて、めっちゃ嬉しかった。その絵がまたかわいい!

 

「Inheritance of life」宮本佳美個展 イムラアートギャラリー

 

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京都丸太町通りに面したガラス張りの白壁のギャラリー。その空間自体がとても素敵だった。そこにわりと大きい作品が並ぶ。写真のように見えて写真ではない、強い光と影を感じる絵。今回作者の宮本さんが在廊されていて、制作過程を聞いて驚いた。黒はいろんな色を混ぜてこの絵のために作った水彩絵の具の黒だということ。滲ませて重ねていくことで作られるということが、見ただけでは想像もつかず、しかしそう聞いてから見ると、その過程の複雑さゆえに表面に現れるシンプルさが際立つのかもしれないと感じた。とにかく強い印象を覚える絵だということは間違いない。阪急うめだギャラリーで見た「数奇景」で印象に残っていたから、今回Twitterのタイムラインに個展の情報が流れて来たときにすぐに気づいて見に行くことができた。

今回のゼラニウムの作品群。作者によるとはじめて生命のある花を描いたとのことで、その力強さには圧倒された。

 

宮本佳美「Inheritance of life」|EXHIBITION|イムラアートギャラリー(imura art gallery)

宮永愛子 公孫樹をめぐるロンド」 京都府立図書館

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宮永愛子さんの作品もまた最初に出会ったのは前述の「数奇景」だった。

今回の展示はかつて府立図書館がまだ陳列室があり、美術の展示機能を備えていた頃、所蔵されていた宮永東山氏の公孫樹文花瓶、それを起点にひ孫にあたる宮永愛子さんがインスタレーションを展開するのがこのたびの展示。図書館の閲覧室の一角に展示スペースがあることで、どこか不思議な感覚はあった。人々が勉学のために興味のために本を読み、調べている部屋の一角に、時を止めたかのように静かにインスタレーションは置かれている。ガラスでできた氷のような本。変化していくはずのナフタリンで形作られたイチョウは厳かに時代を感じる戸棚の中に置かれていた。どこかそれは時の流れが違う空間にあるように思えてしまう。地下一階にある天井が吹き抜けの中庭、サンクンガーデン。抜水政人作「こもれび」という名の読書する少女像があり、そのまわりあちこちに散りばめられるように置かれているガラス。それがパンフレットに書かれていた文章にある「ひかりのことづけ」だろうか?

 

「CONNECT⇄_」 and DOMANI @京都 「宮永愛子 公孫樹をめぐるロンド」|DOMANI・明日展 2021-22|DOMANI・明日展

 

2021年のアート体験をふりかえって

今年もまた新型コロナウィルスの影響を感じた。それまではよく足を運んでいたギャラリーへ、混雑を避けるために行かなかったり、しばらくのあいだは公共交通機関を利用するのが怖くて、マイカーで行けるからとART HOUSEさんだけは行ったりしていた。

秋以降は流行もおさまってきたので、行きたい場所へ公共交通機関を使って見に行くことができた。11月12月はよく動いたと思う。

ギャラリーでは、たなかしんさんの展覧会以外は今まで見たことがある作家さんの作品を目当てにしていたので、新しい作家さんへの出会いというのは少なかった。しいて言うならば、ぎゃらりぃあとさんの企画展くらい。作家一人あたりの展示数は少なくても、取り扱う作家の数が多いので、新しい出会いは生まれやすいかもしれない。

アートフェスということでは、2020年は六甲ミーツアートに行って、2021年はそれよりは小規模な地域性を活かした木津川アートへ行ったので、ふたつをあれこれ比較しながら見て回った。六甲の方は商業的で大規模でスケールの大きさを感じた。木津川の方は瓶原という地域に特化していて、開催する人たちの温かみを感じた。どちらも強い刺激を受けたのは間違いなかった。木津川アートでは、私が知らなかった作家さんも多く、これからも見て行きたい作家さんを見つけられた。

また来年もいろんなアートを体験できるようであればいいな、と思っている。