「介護殺人 ー追いつめられた家族の告白ー」を読んで
この本を読むきっかけは、Twitterでタイムラインにあがってきた敦賀の介護殺人の判決結果についてのつぶやきだった。
敦賀の介護殺人というのは、2019年、夫と義両親を一人で介護していた70代女性が、介護に疲れて三人を殺害したという事件で、2021年1月に判決結果が出た。求刑懲役20年に対し、18年の判決だった。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210105/k10012798421000.html
まず感じたのは、なぜ誰の助けも借りずに三人も介護していたのかという疑問だった。
正直、一人の介護でも大変なのに三人は無理だと思った。制度を知らなかったのか、知っていても使えない理由があったのか。
その疑問から、この「介護殺人」の本に辿りついた。
この本は2016年に発行。毎日新聞のコラムで反響の大きかった介護をめぐる悲劇について、企画報道で取り上げることになり、介護殺人の加害者とその関係者を取材することになったと本のはじめに書かれている。
取材がとても大変だっただろうことは容易に想像がつくので、このような本が出されること自体、とてもすごいことだと思う。取材班の想い、語ってくれた方の想いをしっかりと受け止めて読もうと覚悟してページをめくった。
本の中の個々のことにはあえてここでは触れない。とにかくぜひ目にしてほしい。
https://www.shinchosha.co.jp/book/101291/
本を読んで私が感じたのは、やるせなさだった。介護をせざるを得ない、あるいは愛ゆえにしてやりたい気持ちが、自分の時間をなくして、不眠になる。貧困でお金がなければ制度も使えず、自分でやるしかないと追い込まれてしまって、どうしようもなくなり、そして魔がさす。
私は普段ヘルパーとして働いているので、介護する支援をしている役割なのだけど、仕事で、しかも各サービスは1時間程度の短時間しか関わらないので、続けられるのだと常々思う。ずっと介護している家族は、孤独で、本当に大変だと思う。
支援者は何かできることはなかったかと、思うのだろうな。でも、できることはやっぱり限られているというのが現実だと思う。
制度のなかでしか支援できないし、介護保険の上限額を超えてしまうと、全額自己負担では厳しい。
行き詰まりの中で、見いだせる希望はないのか。
この本にも書かれている、同じ体験をしている人の集まりがひとつの希望ではあるだろうとは思った。
ひとりではないということ、相談できること、誰かに助けてもらいながらも、また頑張ろうという力を自分の中から出していけるのは、同じように苦しんでいる人同士の気持ちの交わりの中から、生まれるような気がする。
いろんな病気の家族会があるように、介護者の集まりもあるらしい。本にも紹介されていたが、男性介護者だけの会が各地にあるようだ。女性に比べてたぶん男性は助けを求めるのが苦手だと思う。だからこそ、こういう集まりが大切だと思った。
下にリンクを貼るのは、「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」というサイト。
支援をしてもらうのがあたりまえ。自分だけが介護を担うなんていうことのないような世の中になってほしいと願う。