最果タヒ展(心斎橋PARCO)へ行ってきました
最果タヒ展が大阪にも巡回してきた。
2021.03.05〜03.21の16日間。10:00〜20:00
心斎橋PARCOの14階イベントホールでの開催。ホール前には大きく看板の展示。
入口でチケットを購入。チケットは800円。ミニ本付きの1800円の2種類。ミニ本は表紙の色が3色から選べる。内容は同じ。私は灰色を選んだ。
入口を入ってすぐのこの展示に圧倒された。
「ループする詩」と名付けられたインスタレーション。円環状の内側に書かれた詩はどこから読んでもいいし、どこで読み終わってもいい。この中で永遠に言葉が存在し続けている。そのことに気づいて、ものすごく幸せな気持ちになった。ことばのなかにずっといられる。
「詩と身体」のインスタレーションで縦と横の直線の内側や外側に書かれた詩もまた同じだった。どこからでも読めて永遠に終わらないことばでありつづけられる。この形が私には何かの碑のようなものに思えた。
この空間の壁面には「詩の存在」と名付けられた透明なアクリルで作られた詩が物体として影を落としていた。ことばでありながらかたちでもあるのが面白かった。
次に興味を持ったのは「詩っぴつ中」。ケースの中に入ったスマホのメモの画面で自動で詩が入力されていく。止まったり、文字を削除したりしながら完成される詩の経過を見れるというのは、思考を外側から見ているようで興味深かった。
少し話がそれるが、私自身もスマホのメモで140字小説を書いている。思いついたことばを入力して保存して、それをカット&ペーストしたりしながら書いている。何を加えて何を削除するか、ことばをどう選ぶか、同じようで作者ごとに違うのだろうな、なんて想像していた。
「いまなん詩゛?」では、壁面にプロジェクターで投影される言葉が、一部だけ変わり続け、ずっと同じだった部分もまた変わっていくことで、刻々と変わっていく意味が面白い。
「座れる詩」と円形のベンチに書かれていて、どうやら詩の朗読が流れているらしいのはわかっていた。展示スタッフの方にどうぞ座ってみて下さいと促されても、ちょっとためらっていたけど、勇気を出して座ってみたら、びっくり。
どこから音が出てるの、これ。骨伝導のような感覚になった。腕から聞こえる?
ずっと聴いていたくなる心地よさ。これは青柳いづみさんによる朗読とのこと。
「詩になる直前の、心斎橋パルコは。」のコーナーでは、壁面に詩がいくつかあり、コーナー全体を覆い尽くすように、ことばのモビールが吊るされている。見ている人の動きで風が起こって、モビールがゆれて、回転して、黒が白に反転している。
それを眺めるのは、ことばを頭に入れて、それが流れていき、波長の合うことばは残ったりしながら、また違うことばに触れていくような感覚だった。
縦長の空間におびただしい数のことばが満ちていて、読んで、読んで、また読んで、と繰り返していくことが、とにかく幸せだった。
展示スペースの出口に、最果タヒさんがことばを寄せていた。
読まれることで詩になる。そんなふうなことばだった。
読み手が意味を作る。その個人的な特別さこそが愛おしいと私は思う。
会場を出て別の目的地へ歩き出そうとして、心斎橋パルコの壁面にあるポスターに気づいた。
展示会場だけでなく、阪急電車ホームでの広告の詩など、詩を日常に見える場所に展示されていることが素敵だと思う。阪急電車の広告が展示されている駅に行かなかったので見れなかったのだけど、Twitterでその様子を見て知ることができたのは嬉しかった。
今回の展示は、本当に素晴らしいものだった。普段、わずかながらことばを紡いでいる者としては、こんなにことばに満ちた空間に身をおけることはない、と思った。インスタレーションの力はすごいな。
最果タヒ展の公式サイトはこちら↓
幼なじみの恋について 〜とある映画のシーンについて考える〜
最近、俳優の若葉竜也さんに夢中です。映画「愛がなんだ」で存在に気づき、NHKの朝ドラ「おちょやん」でハマりました。彼の出演する過去作を追って観ています。 先日、若葉さんが15、16歳頃の出演作である2006年の映画「恋する日曜日」を配信サイトで観ました。監督は廣木隆一さん。私は過去に「きみの友だち」という重松清原作の映画を観ています。(これ、めっちゃいいです。石橋杏奈さん吉高由里子さん出演)
幼なじみの恋のお話で、すごくきゅんとして、いいなと思うシーンもたくさんありつつも、違和感を感じることがあって、モヤモヤするのでブログに書いてみようと思いました。
※ネタバレするので、これから作品を観ようと思っている方は、この先は読まないで、観てからまた読みに来てください!
作品を観るつもりはないけど、私がどんなことを思ったかだけ知りたい人はこの先も読んでもらっていいと思います。なるべく作品の内容がわかるように書いていくつもりです。
さて、映画「恋する日曜日」どんな物語かというと……
Paraviの作品詳細から引用します!
晶(水橋貴己)は父親の仕事の都合で終業式を機に転校することが決まっていた。晶の心に残るのは、幼なじみの直(若葉竜也)への密かな想い。しかし、直は環(芳賀優里亜)に夢中の様子。そんな中、晶の送別会が行われる。最後の日を2人きりで過ごそうと思っていた晶の気持ちをよそに、直は環を送別会に呼んでしまう。そして晶は送別会の最中の些細な喧嘩がもとで家を飛び出してしまう。直の気持ちをもてあそぶ環の態度が許せない晶。その時、弓道部の先輩であり、環の元彼の楽(佐々木和徳)が現れて……。4人の恋の行方は?長野県松本を舞台に描かれる青春の甘酸っぱいラブストーリー。
少し(いや、かなり)補足。弓道部の晶は、引越し前日の終業式に部の先輩である楽から告白される。でも、晶は幼い頃からずっと幼なじみの直のことが好きで、好きだとはずっと言わないでいた。引越し前日に何人かの友達も招くと幼なじみの直も呼び、もともと呼んでないことは言わないで他の子たちはドタキャンになったと言って、晶は直と二人きりで過ごすつもりだった。大勢の方がいいだろうと直は仲良くなった同級生の環も送別会に呼ぶ。そこで晶は環から仕返しのつもりで直に接近したことを聞く。(環とつきあっていた楽が晶に好意を持っているため別れたから。)晶は家から飛び出して、幼い頃の直と結婚ごっこをして遊んだ思い出の場所をめぐる。そのうちに環の元彼の楽に会ってしまい、探しにきた直と環もその場に合流する。そこで晶は楽に勝負を持ちかけられる。勝った方が言いなりになるというもの。弓道で晶が勝ったら楽は環とよりを戻してほしいと頼む。楽からこっそり晶に持ちかけられたのは、楽が勝ったら晶と付き合うということ。夜の学校に忍びこみ、勝負する。晶が負けると楽とつきあうという条件をその場で聞いた環が怒って、楽は晶が直を好きだということをバラしてしまう。環が非常ベルを鳴らして校内を逃げる最中、直は晶の手を取って、屋上まで階段をのぼる。二人で手を繋いで階段をのぼり、1分以内で屋上に行けたら二人は永遠に結ばれるという学校の伝説。それを学校に忍び込む前に環から聞いていた。屋上で直は今の自分の気持ちを晶にもらす。浮かれていた自分が格好悪い。二人は給水タンクらしきものに座っていたけれど、直は立ち上がって、顔を見られないようになのか背を向けて自分の気持ちを話す。
(ここからセリフ込みの描写をはじめます)
「俺だって晶のこと好きだけどさ、それは幼なじみとしてというかさ……」
晶は立ち上がって直に近づき、後ろから手を取ってゆっくり振り向かせ、何も言わずにそっとキスをした。
「あたしは、あたしは直が誰を好きになってもかまわない。離れてたって平気。だから、振る振らないとかそんなのどうだっていい。あたしがおばあちゃんになったら、おじいちゃんになった直に会いたい。会って冗談言ったりケンカしたい。あたしの好きはそういう意味だから」
晶はまっすぐ直を見る。
「晶……」
「直と幼なじみでよかった。すごく楽しかったよ。ありがと」
泣き出してしまう晶を見つめる直。直はゆっくり晶に顔を近づけておでこをくっつける。
「今度は俺が泣かしちゃったな。はじめて会った時も泣いてただろ」
泣き続ける晶を、おでこをくっつけたまま、直はやさしく見ていた。
(補足。晶は幼い時に母親を亡くし、泣いていた時に直がそばに来て手を握ってくれたことがあり、そこからずっと直を想っている。)
この、おでこをくっつけるというの、とても絵になっていた。屋上から見える長野県の長閑な朝の風景に、浮かび上がる二人のシルエットが本当に綺麗だった。きゅんとした。
でも!
高校生の幼なじみがこんなに距離近いもんかな? と思ってしまった。こういうなぐさめたい場面では、頭をぽんぽんとか、背中をぽんぽんとか、ただそばにいるとかがよく見るシーンで、おでこをくっつけるのは、はじめて見た。今までになかったから違和感なのかもしれない。朝ドラ「半分、青い」では背中合わせに座っていたシーンがあった。あれもはじめて見たけど、あれはアリだと思ったし、ドラマの中でめっちゃきゅんとしたシーンのひとつだった。
今回のは、一度目、すごく違和感があった。このブログを書こうと思い立って、二度目に見て、少し印象が変わった。直は晶を幼なじみ以上とは思えない、けれど大切な存在。だから、最大限に自分から近づけるのはここまでで、ギリギリまで近づいてあげたかったのかな、と。
映画はここでエンディングではなく、朝までいた学校からの帰り道の、幼なじみらしい二人の会話、そしてこの町を出て行くため電車を待つ晶、その時に見送らずに家で親とご飯を食べている直、塾へいく楽、バンド仲間とコンビニ前で話す環、と四人のそれぞれが描かれて、晶が電車に乗ってこの町を後にするところで映画は終わる。
(もうひとつの線として、晶たちを教える教師の同級生の帰郷に晶が出会い、話をすることと、教師とその同級生の関係、階段の伝説が絡む。暗にそれは晶と直の未来を示すものとしての布石とも取れる)
晶は直に幼なじみでよかった。たのしかったと伝えている。ここで関係が過去になってしまったのかな、と私はすごくせつなかった。
幼なじみが最大で一緒にいられるのは高校生までだとは思う。私の同性の幼なじみはそうでした。でも、その先は自分で関係をつないでいかないと続かない。共にいることでの関係性はなくなってしまっても、薄くなってしまっても、繋がり続けることはできる。繋ごうとすれば。私の同性の幼なじみは続いている。会っていなくてもメールだけでも。
でも、晶はここでそれをやめてしまうんだろうな、と思うとせつなかった。
おばあちゃんになった晶がおじいちゃんになった直に会ってほしい。そう強く願う。
結論。
おでこくっつけて慰めるとか、近すぎる!
こんなのはじめて見たから違和感あったけれど、よくよく考えてみると、めっちゃ素敵だった!
ずいぶんネタバレしてますが、それでも観たいと思った方はレンタルしてみて下さい。
映画「恋する日曜日」
Paraviでも配信されてます。二週間お試し無料です。
あの橋を渡れば(若き日のレンタルショップの思い出)
素敵なコラムに出逢った。
そのコラムはこちら↓
https://www.pintscope.com/column/yuki-fukutomi-08/
そのコラムを読んで私自身が若い頃通っていたレンタルCDショップの記憶がよみがえってきた。
というわけで、そのレンタルCDショップにまつわる記憶を記しておこうと思ったのである。
私が住んでいた町は、商店街に古い街道が通っている田舎町だ。年月が経つにつれ、町から店がなくなっていった。私が大学生になる頃には、おもちゃの店も書店も時計店もなかった。
そんな町に当然CDショップはなく、レンタルCDショップもなかった。川の向こう岸の隣町まで行かなければ、それらはなかったのだ。
隣町へ行くにはそれなりに大きな川にかかる割に道幅の狭い橋を渡らなければならなかった。歩けば1時間近くかかってしまう距離だから、高校生の私には隣町までの移動手段は自転車しかなかった。歩道は狭く、車が歩道ぎりぎりをビュンビュンと飛ばしていく。風など吹こうものなら、煽られて、車道側へ飛び出しそうになるのを必死で立て直して自転車を漕いでいた。できればその橋は渡りたくないから、レンタルCDショップへはそんなに頻繁には行ってなかった。けれども危険をおかして、あの橋を渡ってしばらく走った先には、音楽があった。好きなアーティストが雑誌でオススメしていたアルバムだとかを借りては、CDラジカセでカセットに録音して聴いていた。その頃私が聞いていたのは、スティービーワンダーのモータウンレコードの時代の曲が中心だった。
隣町の小さな雑居ビルにあったそのレンタルCDショップは、チェーン店ではなくこじんまりとしていて、店にいる人もそんなに多くはなかったが、その空間に行くと、心地よい緊張感を感じられてよかった。そのお店は、私が大学生になる前にできたTSUTAYAの影響を受けてか、いつのまにか無くなっていた。TSUTAYAの方が魅力的に感じられたのは確かだった。店の規模は2倍で、おしゃれな感じがしたからだ。
私が生まれた町を出て別の場所で暮らすようになるまで、TSUTAYAには通った。でも、懐かしく思い出すのは、あの橋を渡って、怖い思いをしながらも自転車で向かった小さなレンタルCDショップなのだった。きっとそれは、音楽に対する興味がどんどん広がっていこうとするその最中にあったからだと、今は思う。
あの橋を渡れば(若き日のレンタルショップの思い出)
素敵なコラムに出逢った。
そのコラムはこちら↓
https://www.pintscope.com/column/yuki-fukutomi-08/
そのコラムを読んで私自身が若い頃通っていたレンタルCDショップの記憶がよみがえってきた。
というわけで、そのレンタルCDショップにまつわる記憶を記しておこうと思ったのである。
私が住んでいた町は、商店街に古い街道が通っている田舎町だ。年月が経つにつれ、町から店がなくなっていった。私が大学生になる頃には、おもちゃの店も書店も時計店もなかった。
そんな町に当然CDショップはなく、レンタルCDショップもなかった。川の向こう岸の隣町まで行かなければ、それらはなかったのだ。
隣町へ行くにはそれなりに大きな川にかかる割に道幅の狭い橋を渡らなければならなかった。歩けば1時間近くかかってしまう距離だから、高校生の私には隣町までの移動手段は自転車しかなかった。歩道は狭く、車が歩道ぎりぎりをビュンビュンと飛ばしていく。風など吹こうものなら、煽られて、車道側へ飛び出しそうになるのを必死で立て直して自転車を漕いでいた。できればその橋は渡りたくないから、レンタルCDショップへはそんなに頻繁には行ってなかった。けれども危険をおかして、あの橋を渡ってしばらく走った先には、音楽があった。好きなアーティストが雑誌でオススメしていたアルバムだとかを借りては、CDラジカセでカセットに録音して聴いていた。その頃私が聞いていたのは、スティービーワンダーのモータウンレコードの時代の曲が中心だった。
隣町の小さな雑居ビルにあったそのレンタルCDショップは、チェーン店ではなくこじんまりとしていて、店にいる人もそんなに多くはなかったが、その空間に行くと、心地よい緊張感を感じられてよかった。そのお店は、私が大学生になる前にできたTSUTAYAの影響を受けてか、いつのまにか無くなっていた。TSUTAYAの方が魅力的に感じられたのは確かだった。店の規模は2倍で、おしゃれな感じがしたからだ。
私が生まれた町を出て別の場所で暮らすようになるまで、TSUTAYAには通った。でも、懐かしく思い出すのは、あの橋を渡って、怖い思いをしながらも自転車で向かった小さなレンタルCDショップなのだった。きっとそれは、音楽に対する興味がどんどん広がっていこうとするその最中にあったからだと、今は思う。
「介護殺人 ー追いつめられた家族の告白ー」を読んで
この本を読むきっかけは、Twitterでタイムラインにあがってきた敦賀の介護殺人の判決結果についてのつぶやきだった。
敦賀の介護殺人というのは、2019年、夫と義両親を一人で介護していた70代女性が、介護に疲れて三人を殺害したという事件で、2021年1月に判決結果が出た。求刑懲役20年に対し、18年の判決だった。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210105/k10012798421000.html
まず感じたのは、なぜ誰の助けも借りずに三人も介護していたのかという疑問だった。
正直、一人の介護でも大変なのに三人は無理だと思った。制度を知らなかったのか、知っていても使えない理由があったのか。
その疑問から、この「介護殺人」の本に辿りついた。
この本は2016年に発行。毎日新聞のコラムで反響の大きかった介護をめぐる悲劇について、企画報道で取り上げることになり、介護殺人の加害者とその関係者を取材することになったと本のはじめに書かれている。
取材がとても大変だっただろうことは容易に想像がつくので、このような本が出されること自体、とてもすごいことだと思う。取材班の想い、語ってくれた方の想いをしっかりと受け止めて読もうと覚悟してページをめくった。
本の中の個々のことにはあえてここでは触れない。とにかくぜひ目にしてほしい。
https://www.shinchosha.co.jp/book/101291/
本を読んで私が感じたのは、やるせなさだった。介護をせざるを得ない、あるいは愛ゆえにしてやりたい気持ちが、自分の時間をなくして、不眠になる。貧困でお金がなければ制度も使えず、自分でやるしかないと追い込まれてしまって、どうしようもなくなり、そして魔がさす。
私は普段ヘルパーとして働いているので、介護する支援をしている役割なのだけど、仕事で、しかも各サービスは1時間程度の短時間しか関わらないので、続けられるのだと常々思う。ずっと介護している家族は、孤独で、本当に大変だと思う。
支援者は何かできることはなかったかと、思うのだろうな。でも、できることはやっぱり限られているというのが現実だと思う。
制度のなかでしか支援できないし、介護保険の上限額を超えてしまうと、全額自己負担では厳しい。
行き詰まりの中で、見いだせる希望はないのか。
この本にも書かれている、同じ体験をしている人の集まりがひとつの希望ではあるだろうとは思った。
ひとりではないということ、相談できること、誰かに助けてもらいながらも、また頑張ろうという力を自分の中から出していけるのは、同じように苦しんでいる人同士の気持ちの交わりの中から、生まれるような気がする。
いろんな病気の家族会があるように、介護者の集まりもあるらしい。本にも紹介されていたが、男性介護者だけの会が各地にあるようだ。女性に比べてたぶん男性は助けを求めるのが苦手だと思う。だからこそ、こういう集まりが大切だと思った。
下にリンクを貼るのは、「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」というサイト。
支援をしてもらうのがあたりまえ。自分だけが介護を担うなんていうことのないような世の中になってほしいと願う。
今月のお酒(2020年11月)
ひさしぶりに今月のお酒を紹介します。
最近飲んでいなかったわけではないのですが、プライベートのことで手一杯で、こちらをサボっていました。でも、今月に飲んだお酒は絶対に紹介しておきたいと思ったので、重い腰をあげることにしました。
さて、今月のお酒は、
長野県諏訪市にある酒造会社(株)舞姫の「PRINCESS TIME 純米吟醸酒」です!
女性の醸造家が女性のためにと考えて作られたお酒とのことで、ボトルの色も綺麗でラベルデザインも素敵です。味の方も飲みやすいです。甘すぎず、酸味も強すぎず、フルーティーで飲みやすいお酒です。価格がお手頃なのもいいですね。
このお酒、私が飲んだのは昨年醸造されたもの。今回調べてシリーズ展開されていることを知りました。低アルコール度数のSWEET&SOURも気になるところです。
↓こちらに商品紹介が載っています。
実は私が頼りにしていた生協の宅配で、徐々に地酒の取り扱いが少なくなってきました。カタログに掲載される確率が減ってきています。
そろそろ地道においしい地酒を開拓しなくては、と思っています。ネット検索しまくることになりそうです。
六甲ミーツ・アート 芸術散歩2020へ行ってきました
秋晴れの10.24(土)、六甲ミーツ・アート芸術散歩2020というイベントへ行ってきました。
2009年から開催されている現代アートの展覧会で今回で11回目。招待アーティスト16組の作品と公募で選ばれた28組の作品を見ることができます。鑑賞パスポートは有料の6つの施設へ入場当日は再入場できるうえ、別の日にすでに入場した1つの施設に限ってもう一度入場できるお得なもの。1日にすべて入場しなくても別の日に何回かに分けて施設へ入場することもできる。
私は前売を購入(大人2200円)。
乗車券付き鑑賞パスポートというのもあり、そちらは六甲ケーブル往復と六甲山上バスの2日間乗り放題がついているのもある。それは鑑賞パスポート料金+1370円。
私は、六甲山へのアクセスのために「六甲・まやレジャーきっぷ」を使いました。阪急版と阪神版があるこの切符、阪急や阪神で六甲まで来る方にはとてもお得。六甲駅あるいは阪神御影駅までの電車の料金、六甲ケーブル下駅までの市バス料金、六甲ケーブル往復と六甲山上バス乗り放題、六甲摩耶スカイシャトルバス、摩耶ロープウェー、摩耶ケーブルに乗れる。一日では使いきれないほどです。(六甲山上と摩耶を同日に行くのはなかなか難しい)
六甲山上バスはチケットを見せるだけでいいので、小銭を使わなくてすんで楽でした。
さて、本題。
今年の会場は全部で12会場。他にJR新神戸駅と有馬温泉エリアにサテライト会場があります。
私はサテライト会場は回らず、メインの12会場のうち、10会場をまわりました。行けなかったのは六甲オルゴールミュージアムと六甲山カンツリーハウス。
各会場へは六甲山上バスと徒歩での移動です。バスの時刻を考慮しながらなので、なかなか大変です。バス時刻表は公式のページから写メしておき、いつでもすぐに見れるようにしておきました。
私が回った順番は以下の通り。
六甲ケーブル山上駅
記念碑台
六甲サイレンスリゾート
六甲ケーブル山上駅の天覧台(昼食)
六甲枝垂れ
風の教会
六甲スカイヴィラ 迎賓館
グランドホテル六甲スカイヴィラ
六甲高山植物園
六甲枝垂れ(ライトアップ)
各場所についての混み具合などの所感。
六甲ケーブル下駅へ行く市バス、阪急六甲駅から乗りましたが混んでました。六甲ケーブルもやや混み気味。記念碑台と六甲サイレンスリゾートは少なめ。六甲サイレンスリゾートでの作品鑑賞時間は11:00からなので、早く着きすぎて開場を待ちました。並んでいたのは数組。六甲ガーデンテラスは混み気味。六甲枝垂れもまあまあ人はいる。風の教会はそんなに多くない。六甲スカイヴィラは会場内が狭いので入場制限はあったが、すぐに入れた。会場内は10人程度かな?グランドホテル六甲スカイヴィラは少なめ。六甲高山植物園は広いので、人が散らばっている感じ。ガーデンテラスから有馬ロープウェー六甲山頂駅までは徒歩7分程度。六甲有馬ロープウェー、乗り場には人の行列。展示場所には数名程度。私が行った日はアーティストが在廊されていたらしい。
10月17日から植物園とオルゴールミュージアム、六甲ガーデンテラスエリアでナイトミュージアムが開催。10月は土日のみ11月は会期終了まで毎日。六甲枝垂れのライトアップは17:00頃からかな? 植物園とオルゴールミュージアムのナイトは平日は18:00受付終了。土日は19:00受付終了。ガーデンテラスからバスに乗ろうとしたが混んでいて乗れず、植物園まで徒歩で15分くらい。植物園では提灯を貸し出してくれる。時間がないので借りなかった。六甲ケーブル山頂駅へ向かう帰りのバスもギュウギュウ詰めでした。
以降は、作品についての所感。エリアごとに分けて書いていきます。☆印が招待アーティスト。
(1)六甲ケーブル山上駅
ケーブルに乗る際にフライヤーが置いてありました。降りたところにもあります。六甲ケーブル山上駅に展示されているアーティストの紹介が書いてあります。
ドイツのブレーメンで活動する「ギャラリー・ヘロルド」のアーティストたちの作品だそうです。
私にとってはあまりよくわからない感じでした。
階段の壁にあった椅子の写真は印象に残っています。マリオン・ボーゼン氏の作品。
六甲ケーブル山上駅は近代化産業遺産に登録されているようです。1932年開業。なかなかレトロな建物です。
(2)天覧台
TENRAN CAFEの外側と店内のテラスに中村萌さんの作品があり、カフェ店内の壁に関連展示としてオクムラミチヨ個展「ことりと…」が10/7〜10/28の期間開催されていました。中村萌さん(☆)の作品は逆光で見辛い感じではあったけれど、作品越しに山の風景があって素敵。オクムラさんの作品はやわらかいタッチと色でやさしい気持ちになれました。カフェ内の作品を見るにはカフェで飲食する必要があります。
私はもともとここで昼食をとるつもりでいました。12時過ぎでしたがすぐに席に案内してもらえました。晴れていたのでテラス席へ。見晴らしが素晴らしいなか、まあまあ手頃なお値段(1200円)でおいしいお昼ご飯(グリルチキンきのこソース。秋限定メニュー)を摂ることができて幸せでした。残念だったのは六甲まやレジャーきっぷを見せたら飲食代10%オフだったのに、帰宅してから気づいたことでした。
(3)六甲山サイレンスリゾート
1929年開業の六甲山ホテルを2019年にカフェギャラリーとして六甲山サイレンスリゾートとなってリニューアルされた。六甲山ホテルは2007年に近代化産業遺産に登録されていたが、耐震性の問題から閉鎖。古塚正治設計の旧六甲ホテルはミケーレ・デ・ルッキが関わって修復してニューアルされたようです。ギャラリーの一室にはミケーレ・デ・ルッキが各国に建築した建物の写真とスケッチが展示されていました。今後は円形の宿泊棟を建設予定らしい。
また玄関には昔のズボンプレッサーが展示されていて歴史を感じました。
六甲ミーツアート作品を見るには料金がかかります。チケットを見せるとスタッフが腕に紙を巻いてくれます。それが入場した人の証みたい。
ここでは内田望さん(☆)、中村萌さん(☆)、高橋生也さん(☆)、久松知子さん(☆)の作品が展示されていました。
私の目当ては内田望さん。動物にサイバーパンクっぽい造形で、質感と精巧さにやられました。とにかくカッコいい!
ギャラリーの窓から入る光が作品と相まって素敵でした。
中村萌さんの作品。木を使われているからか、あたたかみあるし、六甲山というロケーションにぴったりな気がしました。
久松知子さんの作品。
ぱっと目につく色彩が印象的。ボードに開けられた穴のむこうに別の作品の一部が重なる仕掛けが面白いと思いました。
(4)記念碑台
記念碑ってなんの?と思ったら、六甲山開発に関わったイングランド出身の実業家アーサー・ヘスケスグルーム氏の記念碑でした。その記念碑のある高台の原っぱに田羅義史さんの作品、小林夏音さんの作品があります。現代アートらしい、これなんじゃろ?感のある作品。
田羅義史さんの作品。素材は発泡スチロール?
小林夏音さんの作品。原っぱにあるのが似合う。このままずっとあっても違和感ない感じ。
(5)六甲オルゴールミュージアム
行けなかったというか、行かなかった。
ムットーニ(☆)のオルゴールシアターが見たかったのですが、WEB予約でかなりの時間が埋まっていたので、混んでいると思って行かなかったのです。ミュージアム建物に入るまでの木道部分まではフリーエリアだったと後で知り、そこだけでも行けばよかったと思いました。
(6)六甲高山植物園
陽が傾きはじめた頃に園内を回ったので、樹々に光が当たってきれいでした。園内の花を見てまわりながら、作品も見ましたが、私にとってメインは花や植物でした。
アーティストの作品は園内の風景に溶け込んで、独特の世界観でした。
史枝さん(☆)の作品。森の中で風ではためいていた布が、どこか異世界感ありました。
谷澤紗和子&藤野可織さん(☆)の作品。この世界と別の世界の境界に来たような気分になりました。
あとりえナカムラさんの作品。なにものでもないかたち。なにか不思議な感じでした。
(7)六甲山カンツリーハウス
こちらにも行きませんでした。とにかく広すぎるので、歩く時間がないかも、とはしょってしまいました。テイクアウトのお弁当を売っている場所もあり、のんびり過ごすには良さそうな場所。
(8)六甲ガーデンテラス
バス停を降りてびっくりしたのが人の多さ。六甲枝垂れが近いからか? 飲食店やおみやげ店などもある複合施設だからでしょうか。
「自然体感展望台 六甲枝垂れ」は、三分一博志さん設計。総檜葺きの展望台。フレームは檜っぽさを感じなかったけれど、木のような感覚はあった。フレーム越しに見える空がきれいだった。昼に一度、夜に一度見ました。ライトアップして空が暗くなってきたのが17時半頃。暮れていった空の残り火のような明かりと、六甲山から見下ろす街あかりがきれいでした。
史枝さん(☆)のメインビジュアルの旗は、ベンチのあるガラス展示室(陽室)に本物が、外の六甲枝垂れの前に立っているのがレプリカだそう。今年のポスターのはためく旗を手にしたやつ、カッコいい。なかなかきれいにはためいてくれないので、写真を撮るのは難しい。
六甲枝垂れの内部、降りていって風穴と呼ばれるところに展示されている上坂直さんのミニチュア作品はぜひ日があるうちに見てほしい。ミニチュア作品の部屋の窓からの借景が素敵だから。風穴自体はわりと暗めなので、写真を撮るのは難しかった。
この六甲枝垂れがあった場所、2002年までは「十国展望台」という回る展望台があったらしい。六甲ミーツ・アート芸術散歩ガイドというパンフレットに載っていました。
六甲ガーデンテラスエリアで見ることができる展示は六甲枝垂れの史枝さんと上坂直さんを含めて6つ。
そのうち1つは有馬ロープウェーへ向かう道の途中、橋の手前の砂利の広場にある大野光一さんの作品。すこし不気味な印象。インパクトはあった。
六甲ガーデンテラスの見晴らしの塔という建物で、コリー・フラー氏(☆)のアートがある。光と音のインスタレーションなんだろうけど、私にはよくわからなかった。
灰野ゆうさんのアメフラシはとにかく可愛いい。座れるベンチのもあって、記念撮影にぴったり。灰野さんの作品が展示されているエリアは展望スポットでもある。階段に座って休憩したり、眼下に広がる神戸の街を眺めたりするのにいい場所。
田岡和也さん(☆)の作品はリトルホルティというショップ内にあった。写真は撮り忘れてしまった。折り紙で描かれた風景画。
(10)六甲有馬ロープウェー 六甲山上駅
竹内みかさん(☆)の作品が展示されているのは、休憩室と銘打ってあったが、今は休止されている六甲有馬ロープウェー表六甲線の乗降場だったと思う。駅の名前がセンチメンタルパーク駅になっていて、使われていないロープウェーの車内に詰め込まれたものたちと、天井に吊るされたメロディペットたちが、せつない世界観だと思った。失われていくものを想い出の中で慈しむ感覚があった。ここには夕暮れ時に来たいと思っていて、その通りに来れて暮れゆく光の中で作品を見れて、本当によかった。
(11)グランドホテル六甲スカイヴィラ
営業中のホテル、グランドホテル六甲スカイヴィラのロビーに展示されている松本千里さんの作品。アーティスト本人が来て形を変えるという日に行ったのに、残念ながらそこには立ち会えず。ロビーにあって違和感のない上品さのある造形だと思った。
このエリアで最も印象的だったのは、10年くらい閉鎖されていた5階建てのホテル?をまるごと使って展示されている「六甲スカイヴィラ迎賓館」。C.A.P.という非営利活動法人が30名余のアーティストを集めて展示している。一部屋を一人のアーティストが担当。廊下の壁や、階段なども使われている。とにかくボリュームある。私にとっては、いろんなアーティストのいろんな世界観に触れられて、満足感がもっとも高いエリアだった。
そのなかで気になったアーティストの作品を以下に。
浅山美由紀さんの作品。赤が印象的。まるいかたちだからか、赤でも嫌な感覚を感じない。可愛く感じる。
マスダケイコさんの作品。鍵鳥という設定が物語を感じて好き。鳥もいろんなのがいて可愛いい。
八木淳一さんの作品。幻想的なモノクロの絵が素敵だった。
山下和也さんの作品。黒い壁に色とりどりの文字がいいな、と思った。
(12)風の教会エリア
風の教会は六甲オリエンタルホテルの庭園内に1986年に建てられた安藤忠雄設計の結婚式用チャペル。ホテルは2007年に営業停止して閉鎖されていたが、2015年の六甲ミーツ・アートで風の教会が展示会場となって、期間限定公開されることになった。2017年にホテルは解体されて更地になったらしい。跡地の砂地を歩いていって風の教会を見る感覚は、どこか廃墟に来た感覚に似ていたのはそのせいだったか。2015年以降も2018、2019年と限定公開されて今年で4回目。
廃墟感と相まって砂地に置かれた中村邦生さんの展示は、どこへ来たんだろうという感覚になって面白かったけど、好みではなかったから写真を撮らなかった。
風の教会内の山城大督さん(☆)の作品は映し出される風景と風の教会の礼拝堂がマッチして、ずっと眺めていたらなにか感じるものがありそうな作品でした。(こちらも写真にうまくおさめられず)
風の教会は十人程度の人が遠巻きに見ているのと、ベンチに座ってしばらく過ごす人で、落ち着いて一定時間過ごせる場所ではなかったけれど、本当はそういうふうにしたい場所でもあった。安藤建築らしい、コンクリート打ちっぱなしで、コンクリートの壁に映る光や影が印象的だった。礼拝堂までのアプローチが、紅葉した樹々を分かつようで、私は好きな風景だった。
六甲ミーツ・アート芸術散歩2020は大満足のアートイベントでした。
2020年11月23日まで開催されます。
私のつたないレボがこれから行くという人になんらか参考になればいいのですが。
また、行けなかった人、行かなかった人に、場の雰囲気を感じてもらえたら嬉しいです。
長々と続くレポを読んで下さり、ありがとうございました!
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