今月のお酒(2020年8月)エッセイ風
今月は自家製完熟梅酒。
なので、なぜ完熟梅酒を作ることになったかを、梅酒にまつわるエピソードとともに、約一年前を振り返って語りたいと思う。
私は梅酒の梅が好きだ。梅の加工品の中ではいちばん好きかもしれない。
母が知り合いから梅酒の梅だけをもらってきたのをはじめて食べたのはいつのことだっただろう。中学生くらいか。
だから、約一年前に梅をもらった時、梅酒にすることに迷うことはなかった。
ただ、そのもらった梅が、青梅ではなく、完熟梅だった。
庭の梅が落ちて困っているから、もらってくれない?
そう言われて落ちた梅を一緒に集めて持ち帰った。
たまたま、私がその時期にそのお宅を訪ねたから。
もらった梅は、私の家の台所で、甘く爽やかな芳香を放った。それはひとときの間、幸せな気分になれるいい香りだった。
ずっとそのまま梅を置いておくわけにはいかない。
すぐにネットで調べた。完熟梅で梅酒はできるのか。むろんできる。
翌日、果実酒用の瓶やリカーなどを買ってさっそく完熟梅を漬けた。
2ヶ月後の写真
約1年後の写真(飲みはじめて3週間後)
色が濃くなっていた。
甘みをすこし控えたからか、甘ったるくはなかった。度数の高いお酒特有の鼻に抜ける感覚はしっかりあって、でもあっさりしていた。さらっとしていた。
浸かった梅の実を食べた。
柔らかく、噛めば口の中でほろっとほどけて、芳醇な味。青梅よりも数段おいしいと思った。幸せだ。
もらってきた完熟梅の香りの記憶と一年間漬けたお酒の梅の実の食感と味。いつまで私の中に留めておけるかわからないけれど、残りわずかな梅酒と梅の実を、降ってきた恵のように感じながら、味わいたいと思う。