みやふきんの見聞録

見聞きしたり感じたものを記録するブログ

ARTISTS’ FAIR KYOTO 2022へ行ってきました

f:id:mi8fukin:20220306142104j:plainTwitterに流れてきた美術手帖のツイートで興味を持ち、行って来ました。

2018年から始まったアートフェアで今年で5回目の開催だそうです。

国内外で活躍するアーティストの推薦を受けた若手アーティスト、公募選出されたアーティストの作品を重要文化財や企業ビルを舞台に展示するもの。

二日間と短い期間ではあるけれど、直接アーティストに話を聞けるのはすごいと思います。

また同時に国内外で活躍するアーティストの展示もあるので(今回は清水寺)、一度に多くのアーティスト作品を体感できるのも魅力的。

今年の会場は主に3会場。京都府京都文化博物館別館、京都新聞ビル地下一階、清水寺

京都文化博物館から京都新聞ビル、清水寺へは無料シャトルカーが運行されていて、停留所に来た人(一組ずつ?)を随時希望のどちらかの会場へ送ってくれました。私は京都新聞ビルまで利用しました。

 

さて、各会場で気になった作品について語ろうと思います。

 

京都文化博物館別館

 

大和美緒さんの作品

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赤いドットが正方形のアクリルに描かれていて、それをたくさん並べて一つの作品にしてある。作品のすぐ近くに座っていた方(作者の代理の方)に話を伺うと、島津製作所に協力してもらい、血液細胞の様子をうつしとり、アクリル絵具で描いたものとのこと。

過去にも似たような作品を制作されていて、制作に関する詳しいインタビュー記事があったので、リンクを貼る。

KYOTO STEAM 特集「国際アートコンペティション スタートアップ展」 第6回:一滴の血液から広がる世界をミクロな視点で見つめ、描く インタビュー:大和美緒(美術家)|Technology|AMeeT

 

この作品を見たときに感じたのはやはり血液の細胞だったし、もしかしてと思って訊いてみたらそうだったので、腑に落ちた感覚はあった。しかし一つひとつのパターン、そしてそれをどう組み合わせて並べるのか、それが生みだすものに思いを馳せると、恣意性とそうでないもの、それが生みだしたものを、見る側が意味を見つけるような、そんな感覚が生まれてきて、パッと見た目の強さと、じっくり細部を見ることで生まれる感覚の生っぽさというか、絵の具の盛り上がりや、印刷では出せないゆらぎの感覚が沁みてくるのはあった。

 

川瀬理央さんの作品

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枯れ木のような細い棒状が集まってかたちになっている器。

たぶん実際には器としては使えないだろうと思われるオブジェ。

細密画が好きな私としては細かいものが密になったものというのはたいそう魅力的に見える。

アーティストさん本人がそばにおられて、話を聞いた。制作過程ではとても細く棒状に伸ばしたものを大量に作り、組み合わせていくとのこと。スマホで写真を見せていただいた。

何に似ているのだろう、とずっと考えていた。

たぶん骨だ。

器の色は白。少しくすんでいる。すぐに壊れてしまいそうな儚い佇まい。それが魅力のような気がした。

宮永愛子さんが推薦されてというのもまた嬉しいポイントだった。私は宮永さんの作品が大好きなので。

京都新聞ビル地下一階

林勇気さんの作品

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京都新聞ビルの地下一階は以前印刷工場だったらしい。あちこちに溝があり、何かの跡であろうというのが残っている。薄暗い展示会場は独特の雰囲気。この映像作品が少し内に奥まったいわゆる凹んだ個室のようなスペースで展示されていたことがすごく効果的だったように思えた。アーティスト本人がおられて、たまたま声をかけてもらえた。たぶんそのスペースにいる人がまだひとりふたりと少なかったからだろう。6分間の映像作品で、一つの写真から始まり、多くの写真が次々に現れては分割され、あちこちへ飛び移り、またひとつになり、分割されたものが別のかたちになり、それが動きまわり、軌跡だけで埋め尽くされる終焉へと向かう、そんな作品。

私は記憶のようだと感じた。回路でしかないあやふやなものだけれど、確かにあって、意味を持っているのに、記憶はいつのまにかどこかへ行ってしまう。その回路を辿れなくなってしまう。でもあったことはなかったことにならないし、軌跡としてかたちはなくともあるのだろう。そんなふうに思えた。

この方の作品をもっと見てみたいと思ったら、兵庫県立美術館でわりと長い期間やっている展示があるようだ。最近できた中之島美術館でも展示はあるようだけど、それも期間は短め。機会を作って兵庫県立美術館に足を運べたらいいなと思う。アーティストのサイトにあるアーカイブも見てみようと思う。

Yuki Hayashi video works

 

www.artm.pref.hyogo.jp

 

清水寺

Yottaさんの作品

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仁王門となりに横たわるバルーンのこけし「花子」さん。なんか喋っているけれどわかりませんでした。インパクト大! 清水寺という場所にぴったり。巨大バルーンアートはとにかくインパクトがある。そして愛らしさがあるからこそ、その場にあっても馴染むというか大歓迎な感覚が生まれる気がする。

以前にもこけしの花子さんは京都に来ていたらしい。その時は京都市美術館別館だったっぽい。

maidonanews.jp

その時から気にはなっていたので、今回見れたのは嬉しい。

 

ヤノベケンジさんの作品

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西門前にKOMAINU。メタリックでかっこいい。

めっちゃ守っている感じ。

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成就院には宇宙服の猫が掛け軸に仕立てられた絵とともにあった。どちらも清水寺という空間にはまっていた。

YANOBE KENJI ART WORKS

名和晃平さんの作品

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清水寺成就院にて展示。名和さんの作品は神秘的な動物のイメージ。テレビなどで見たことはあるものの実物の作品を見るのは初めて。粒でできた鳥は、やっぱり神秘的で厳かなイメージ。

KOHEI NAWA

塩田千春さんの作品

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以前インスタレーションを見たことがあるので、そのイメージで期待していたので、小品だったことは私の中では少し残念だった。塩田さんの作品のイメージである「赤」は健在で、臓器のような生々しさとともに痛々しさと儚さがあった。

CHIHARU SHIOTA–塩田千春

井口皓太さんの作品

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初めて知ったアーティスト。「空の時計/Blank Clocks」というタイトルの作品は少し前の録画映像をモニターに加工して映し出される。そのモニターが円形で、どこか標識のようでもある。分割されて加工される映像がノイズのように、でも意図的に見えるのも面白かった。

検索したら東京オリンピック2020の動くピクトグラムを作られて方だとわかった。知らないと思っていても目にしていたのだなあ。

 

宮島達男さんの作品

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清水寺経堂での展示。仏像は撮影禁止とお達しあり。

仏像の向かい側に設置されたスクリーンに映し出されるのは、カウントダウンしてゼロになった瞬間に洗面器の水に顔をつける男性の上半身。背景は大きく揺れて、船上での撮影だとわかる。スクリーンから少し離れたところにある絵画が、その映像を読み解くヒントになっている。

繰り返されるカウントダウン。口調や表情の変化。どこかシュール。でも見入ってしまった。繰り返される、あるいは終わってもまた始まるカウントダウン。宮島さんの作品には欠かせない要素だ。

私が多色発光ダイオードのデジタルカウンターでの作品を最初に見たのは東京オペラシティーで、最後に見たのもやはり東京で、谷中の小さなギャラリーだった。もう20年近く前のことだと思う。その時からテーマは変わっていないのだろう。ずっと生と死について。

今回宮島達男さんの作品を久しぶりに見ることができたのが嬉しく、また宮島達男さんが推薦されたアーティスト作品に惹かれたことを嬉しく思った。

Tatsuo Miyajima Studio

全体の感想

たくさんのアーティストの作品を一堂に会して見ることのできるイベントや展示はわりと好みなので、とても刺激的で満たされた感じがすごくある。

会場が離れていても無料シャトルカーで移動できたりと工夫もされていて、存分に楽しめると思った。

ただコロナ禍なので、どうしても密になるのを避けたかった感じは私の中にあった。京都文化博物館別館での二階展示は、人数制限があり、整理番号が呼ばれるまでは二階へ上がれない。人が多い会場で待つのは難しく、展示を見るのを諦めてしまった。

 

公式サイトでは、過去の展示風景の画像も見ることができるし、後日今回の展示の画像も見ることができる。また公式Instagramでも作品が紹介されている。

ARTISTS’ FAIR KYOTO 2022 | 京都発アート・オブ・シンギュラリティ 既存の枠組みを超えたアートフェア

 

https://instagram.com/artists.fair.kyoto